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2008年2月13日 (水)

運命

美容師のお姉さんに憧れて、1週間以上が経った。ぼくは、美容師のお姉さんに近づくためのプランを実行した。大好きな彼女のために。

まずは、彼女の載ってる雑誌探し。ブックオフを何店舗か回ったが、男性誌に載っている彼女のスナップは今とは髪型が違い、少しイメージの違うものだった。女性誌は、調べてあったやつは見つからず、他のサロンスタッフが載っている雑誌を恥ずかしながら少し見たが、彼女が載っているものに出会えなかった。そして、原宿のブックオフがつぶれていてショックだった。

そして、最初の月曜日。その日は彼女の美容院は休みの日だったので、彼女がカットモデルを探しに街に出ているかもしれない日だった。しかし、その日は今の彼女がフランスに発つ前の最後のデートがあったので、一人で歩き回ることはできなかった。でも、そのガールフレンドと一緒に原宿を歩いていたら、美容師の女性らしきコートを着た人を一瞬見たような気がした。そして、その美容院の男のアシスタントの人を見かけた。もしその美容院の女性らしき人が本当にその人だったらと、うじうじ考えて少し後悔した。

水曜日。ぼくはその美容院の彼女には会えないけど、なんか雑誌とかに声かけられたりはしないだろうかと思って街を歩いた。しかし、あいにくの雪。ちょっといい格好をしすぎて、外を歩く気さえあまり出ず、ずっと表参道ヒルズのベンチに座っていた。でも、こんなことしててもダメだと、街をかさをさして歩いていると、モデル事務所の方にスカウトされた。完全に奇跡だった。そのときは本当にそう思って興奮した。あいのりに出てたことのある人が入っている事務所で、もしかしたら本当に美容院の彼女に近づけるのではないかと興奮した。でも、家に帰って調べると、その事務所は結構スカウトをよくしているところで、いろんな人を声かけて、そして、レッスン料等にお金がかかるらしい。モデルになるのはお金がかかるらしく、いろんなサイトで詐欺的な話も出ていた。でも、話は聞きに行った。銀座のマンションだった。でも、そこまであやしい感じはなく、レッスン料と撮影料で9万円。それ以上はかからないらしい。他の事務所に比べれば全然安い方だし、あからさまに詐欺のような事務所ではなかった。ぼくは、今日まで真剣に悩んだ。一応その事務所が抱えてるモデルさんは本当にいるし、仕事も本当にありそう。でも、そんな人は一握りだし、いろんな人に声を掛けている事務所なら、仕事のない人だってたくさんいるはずだ。でも、美容院の彼女に近づくためにはよい近道になるかもしれない。もし、ぼくがその一握りになれるのなら、彼女の美容院にモデルとして行くことだってあるかもしれないし、彼女に知ってもらえて、仲良くなれるかもしれない。仕事は本当に来るのだろうか。とても考えた。そこでぼくが考えた結論は、ギャラ引きだ。ギャラで9万円返すという方法。事務所から電話かかってきたら、それを提案してみよう、そしたら事務所が自分をどの程度評価しているのかが分かる。もしそれでオッケーしてくれるのなら、返せるだけの仕事が来る見込みがあるってことだし、だめだったら、やっぱりかもってことかなって。今日、事務所から電話がかかってきたので、それを提案した。しかし、やはり答えはノー。ギャラ引きをするのは特待のみ、仕事にすべてをささげてくれる人じゃないとだめだって。もっと突っ込んで話せばよかった。一生懸命仕事しますって少し説得してみればよかった。でも、そう言われてしまっては断るしかなかった。ぼくは本当に情けなくて、勇気のない人なんだろう…。

もちろん、その日は他に声かけられることはなし。そして、次の週の火曜日。本日。再び美容院の休み。今日は絶対に美容院の彼女に会おうと決心して街に出た。しかし、やはりあいにくの雨。ぼくはどうしてこうだめなのだろうか。彼女へのプランを決行する日はいつも雨。今日は、真剣に歩いた。常に会ったときどのように話しかけるのか考えながら。渋谷、西武、マルイ、ファイヤー通りから原宿駅、原宿の通り、ラフォーレ、表参道、青山、ひたすら歩いた。彼女に会えたら、モデル事務所のスカウトの話とか、直島の話とか、何度もシミュレーションした。何度も勝手に妄想で会話した。バレンタインも近いし、彼女からチョコをもらいたかった。本当に彼女に会いたかった。でもどうせ会ったら声もかけられないのかなってネガティブになったり、一緒に代々木公園で休憩するようなポジティブになったり、とにかく彼女のことをいろいろ考えながら、きょろきょろしながら、歩いた。先ほどのコースを2往復した。彼女に会えることだけを期待して2往復した。3時間くらいあるいたかもしれない。午前と午後で2往復。彼女に会ったらどうしよう、いたらどうしようと思いながら。

でも、結局会えなかった。彼女はいなかった。今日はバレンタインも近いし、今日くらいは彼氏とデートでもしてるのかもしれない。カットとか、カラーとか、パーマとか、休みの日もレッスンしてるのかもしれない。毎日の疲れでずっと寝てたかもしれない。ぼくには彼女が今日何をしていたかはわからない。でも、いろいろ考えた。彼女が何をしてたか気になった。誰か教えてほしい。彼女に会えなかったのが本当にくやしかった。

運命とはなんなのだろうか。ぼくは、美容院のその彼女に運命を感じてはいけないのだろうか。彼女に声をかけられたとき、60億人の人の中、あまり人通りの少ないところで、ぼくはたまたま声をかけられた美容院に行った帰りで出てきた。彼女はたまたまそこを通りかかったと言う。そして、そこに出くわしたとしても、彼女がちょうどぼくを注目し、ぼくはちょうど美容院の帰りでいい感じの髪型だった。そして、彼女がぼくに声をかけた。これは運命ではないのか。よーく考えればなかなかの偶然である。すごいことであるように思う。でも、今日ぼくが歩いた3時間は、運命を確かめに行ったのだ。彼女に会えるなら、運命なら、きっと今日彼女に会えることができたかもしれない。運命を確かめに行った。これでも無理やりな運命である。今日は彼女が美容院が休みで、カットモデルを探しているはずだ。そして、いそうなところは全部行った。確率で言えば高いように思える。それでもぼくは彼女に会えることができなかった。ぼくは今日完全に運命を作ろうとした。運命は自分で作るものだと思った。でも彼女に会えなかった。とてもくやしく、寂しかった。

ぼくは、今彼女にメールを送ろうか悩んでいる。スカウトのこと、コラムで言ってた直島のこと。あなたはきっとすばらしい美容師になれますって言いたいけど、いきなりメールを送るのもやっぱり変だし、勇気が出ない。彼女にきもがられたら、うざがられたら、彼女に嫌われたらおしまいだから。そして、いっそのことデートに誘おうかとも考えている。このままでも、何にも起こらないままだ。もしかしたらもう1度くらいはカットモデルで切ってもらえるかもしれないけど、それだけだろう。でも、あんなに楽しくて幸せだったあのカットモデルの時間をもう一度味わえるのはとてもうれしいことである。また、今のぼくの彼女がフランスから帰ってくる前に、決着をつけたいってのもあった。ぼくは二股がかけたいわけではない。もし、万が一美容院の女性とうまく行くようならもちろん今の彼女とは別れるつもりだ。うまくいかなくても、こんな思いのまま彼女とは付き合っていけない。もちろんぼくはその彼女が嫌いなわけではない。好きである。この気持ちは言い訳にしかならないので、うまく言えないが、とにかく今は美容院の彼女だ。美容院の彼女のことばっか考えてる自分がいる。9泊10日の旅行が近いのに、美容院の彼女のことばっか考えている。デートに誘えたとしたら、どこに行けばよいのだろうか無駄に考えてしまう。宇宙一優柔不断なぼくに彼女をデートに誘えて、彼女を楽しませることができるだろうか、悩ましいところである。でももちろん、デートに誘ってふられたら、もうそれで終わりである。もう一度できるかもしれないカットモデルは絶対にない。彼女に会っても話すことすらできない。今の関係を崩してしまうことになる。それがぼくには怖い。そしてその可能性は果てしなく高い。彼女のことぼくは何にも知らない。きっと彼氏だっているのだろう。きっといろんな男性に好意を持たれているのだろう。タバコを吸う人だったらどうしよう。彼女のいる世界に全然は入れてない。彼女に全然近づいてない。でも、もうこの感情抑えられないし、彼女に会いたい。もうどうすればよいのかわからない。未送信ボックスに入っている彼女へのメールを何度も見ては修正している。何度も考え、躊躇して、ずっと未送信ボックスに入ったままなのだろうか。送ってしまったらもう終わりだ。ほんのわずかな米粒よりも小さな望みにかけるのだ。ぼくにはそんな自信ない。でも、その想いはきっと届けたい。ぼくとデートしてほしい。彼女からチョコがほしい。年の差だって少しはある。年上のお姉さんだし、ぼくみたいな子供には興味ないだろう。でも、ぼくはあなたが好きです。それは、もう仕方ない。好きなんだから。ぼくにはもうわからない。何を信じ、何を求めればよいのか。でも、これだけは確かだ。何かを得るためには何かを犠牲にしなくてはならない。何かを捨てなくてはならない。それがきぼである。わからない。むずかしい。

美容師の彼女が好きです。

でも、怖すぎるよ。

2008年2月10日 (日)

きぼ

きぼ。

それは果てしなく遠い夢ではない。これさえあれば、人生が安らかになるもの。すべてを投げ出せば、届くかもしれないもの。

誰しもがきっと持っているであろう、その感情。想い。でも、それは人それぞれ違うものであろう。ある人は、ずっと歌を歌っていたいって言った。自分が考えていることを歌で誰かに伝えていきたいって言った。ある人は、とにかく研究をしたいって言った。世の中の物理的な疑問を解明していきたいって言った。ある人は、ただただお金がほしいって言った。何に使うでもないけど、ただ、お金がほしいって言った。ある人は、死を求めているって言った。何にもない世の中、生きていてもしょうがないって言った。そして、ある人は、大好きな人と結ばれたいって言った。自分は情けないやつだけど、その人のそばにいられるなら、ずっといたいなって言った。

きっと誰もが思い描くきぼ。でも、それを実現するためには、必ずさまざまな苦難が待っているはずだ。さまざまなものを捨てなくてはならないはずだ。理性だって捨てなくてはいけないはずだ。人間は、そう簡単にできるもんじゃない。人には責任がある。生活がある。周りには人がいる。

きぼ。ぼくにはよくわからない。そんな矛盾した想いは、ぼくにはわからない。

2008年2月 5日 (火)

ちっぽけな自分

どうしてこんなに自分はちっぽけで薄っぺらなのだろうか。

ぼくは、人と本音でぶつかったことがない気がする。

いつからだろうか。自分を嘘で固めるようになった。友達にも、彼女にも、家族にも、すべてに違う自分がいる。ある事柄に対して、こいつにはこうやって言ってたな、あいつにはあぁやって言ってたな、ってのがよくある。なんかこうやって言ったら、自分に不都合になる気がして、全くどうでもいいようなことで嘘をついてしまうことがとても多い。何か都合の悪いことを聞かれれば雰囲気でごまかしたり流したりすることもよくある。何かいつもぼくの言葉には心がない。適当でその場限りの発言が多い。他人のこと考えて気使っているようで、結局自分のことしか考えてないのだろう。自分のために、嘘を並べるのだろう。ぼくは人に相談をしたことがない。恋とか、人生とか、そんなこと人にしゃべったことがない。その相談相手も困らせるし、自分も何にもいい気分がしない。誰もハッピーにならない。

ぼくは、他人の気持ちが気になる。それは確かである。今その人はどう思ってるのだろうとか、その人は何を感じているのだろうとか、すごく気になる。でも、それが嘘につながるのかといえば、違う気もする。思ったことは口にしない。その場に合わせる。人と近くなりすぎない。必ず、人とどこかに壁を作って、どこかに影を作っている。「野ブタ。をプロデュース」を読んでいたら、涙が止まらなくなった。あそこまで大げさじゃない。ぼくは別に決して人気者ではない。でも、何か自分のこと見てるようで辛かった。ちょっとしたことで、一気に化けの皮が剥がれ、孤立した桐谷修二。ドラマを見ていたので、その後また、みなと仲直りして元に戻るのかと思ったら、本じゃ嫌われたまま、転校して終わりという展開で、大きなショックを受けてしまった。

ぼくがしている薄っぺらなメール。ぼくがしている薄っぺらな会話。薄っぺらな関係。それが何かどうでもよくなってしまった。そんなことしている自分がとても嫌になった。もう、人生をやめてしまいたくなった。眠れず、ずっとそんなこと考えていた。何が研究だ。何が勉強だ。何がデートだ。何が旅行だ。何が屋久島だ。何がおしゃれだ。何が美容師のお姉さんだ。何が新しい恋だ。すべてのこと、投げ出したくなった。誰もいないどこか遠くに、一人でいることを望んだ。

薄っぺらでちっぽけな自分。つまらない人間。

結局は、美容師のお姉さんにすがって、妄想ふくらませて、気づいたら寝てて、元に戻ってた。壁を作った、さまざまな顔を持った自分に戻ってた。自分の感情ってよくわからない。自分が頭で考え、心の中でしゃべる内容だって、頭で考えて、自分の本心ではない気もしてくる。こうやって考えてる自分が好きだから、心の中でこうやって考えようって、脳みそが命令しているような気がする。そして、本当に自分が抱いた思いは、一生表に出ない。ぼくの心の中にも出ないのではないかって気がする。こんな自己満足な文章だって、自分の本心ではないような気がする。こうやって無駄に書いている自己満にひたっているだけのような気もする。いまいちよくわからない。自分がわからない。生きることがわからない。このままでいいのかわからない。いつか嘘のない人間になれるのだろうか。わからない。何もかもわからない。

ただ一つ言えることは、ぼくはとてもちっぽけで薄っぺらな人間だってこと。

これにはぼくのどんな感情も異論はなさそうだ。しかし、こんな自分を改善したいのか、こんな自分を実はかっこいいと思っているのか、それはぼくにはわからない。誰にもわからない。生きてても、死んでも、わかることはない。結局はぼくが、どんな感情で行くか次第だ。どんな感情を脳みそから命令させるか次第だ。そんな脳みその命令は、脳みそが決めるのだが、それもまた、決めるのは脳みそだ。もうよくわからない状況だ。そんなよくわからないぼくの思考回路が、嘘を生み、壁を生んでいる。こんな思考回路の違いを性格というのだろうか。それもまた違う気もする。

ぼくは、今美容師アシスタントのお姉さんのことばっか考えちゃってしょうがない。偶然会ったとき話す内容、雑誌に載ったときに送るメール、何度もシミュレーションして、楽しんでる。でも、結局シミュレーションどおり進んだことなんて一度もない。よくわからないこと言って後悔するだけだろう。

ぼくは、友達関係、恋人関係、家族関係、どれも薄っぺらな関係だとは思っていない。でも、自分は薄っぺらだ。どうしても壁作っちゃう。嘘ばっか言っちゃう。やっぱ生きててもだめかな。人のために生きるなんて無理かな。自分の人生は人のためにあるっていうのに。

2008年2月 3日 (日)

ついにぼくは恋をしてしまったみたいだ。

もちろん、見込みなんてまるでない、ばかみたいな恋だ。

話は2ヶ月前にさかのぼる。その日は文化祭の片付け休み。ぼくはとんでもなく大きなその文化祭に今年初めて行った。友達のあてがあって、その出し物を見に行ったけど、結局あまりいれずに、東京タワーを見て帰った。

そんな文化祭の片付け休み。ぼくは髪を切りたくて、都心に出た。散髪にお金をかけるのが嫌で、誰かに声を掛けられないかと思って都心を放浪することにしたのだ。その日は平日だったのでとても運が良いことに原宿駅の近くでうまい具合に声をかけられて、7000円が3000円になるというのでその足で切りに行くことにした。表参道の美容院なんて初めてだったし、緊張したし、若干ついていけない雰囲気だったが、なかなか良い感じの髪型にしてもらえた。そして、その帰り、運命の出会いが起こってしまった。

その美容院を出てすぐに、なんかこっちの方を見てる女の人が2人いた。まぁ特に気にせず歩いていると、そのうちの一人の女の人が走って追いかけてきた。もちろん自分を追っかけているのかどうかもわからないし、気にしないフリをしていたが、結局ぼくに声を掛けてきた。何かと思ったら、やはり美容院であった。カットモデルを探していて、写真を撮らせてもらいたいと言われたので、少し動揺したが、名前と連絡先を書き、その場で写真を撮られた。そして、そちらの連絡先が書かれた名刺もいただいた。青山にある美容院のアシスタント。

ぼくはてっきり何かの雑誌とかに載るようなモデルか何かなのかと思って、とってもうれしかったし、いつ連絡が来るのかとても気になった。それもそのはず、どこかのサロンでそういうことをやっていないかと何度も聞かれたし、連絡しますと言ってくれたので、勘違いしてしまった。そんな経験はなかったからとてもうれしかったし、声を掛けてくれた女の人がかわいかったので、とっても調子に乗って名刺に書いてあった携帯の連絡先をその女の人の名前で登録し、その女の人に電話をかけるフリやメールを送るフリなどをして、気持ち悪い感じだった。

連絡がいつ来るかとわくわくしていたが、結局全く連絡はなかった。もらった名刺を、ただ丁寧に保管しているだけで、月日がただ経っていった。最初に調子に乗ってたのがいけないのかなとか思ったし、話したときに今髪切ってきたばっかりだと言ってしまったので、それが失敗したかなぁと思っていた。それからは、アパレルのバイトには落ちるは、履歴書送ったのに全く連絡が来ないはで、いろんな電話を待っていることが多かったが、結局すべて連絡が来ることはなかった。

そして、2ヶ月がたち、年が明け、テスト期間に入った。髪はついに伸びてきて、テストが終わったら切りたいと思った。そして、ぼくは限りなく少ない、小さな情けない勇気をふりしぼって、その女の人にメールを送ることにした。もう会うこともないだろうし、やけくそな気分でメールを送ってみた。送った内容は完全にへたれメール。ずっと覚えてたくせに、ずっと連絡待ってたくせに、髪切りたいと思っているのですが、それで声を掛けていただいたことを思い出したなんて書いて。図々しいんですけど、切ってくれたりしますか、なんて気持ち悪い言葉。ホントに自分はへたれですっていうメール。   …でも、メールを返してくれた。髪を切ってくれるって!!

カットレッスンで切るのだが、その日が楽しみでたまらなくなった。わくわくした。声をかけてもらった日のこと何度も思い出した。声を掛けてくれた人はかわいかったし、その人に切ってもらえるだけでもうれしい気持ちで、本当にわくわくした。その日に何を着ていくかも考えた。自分が考える一番おしゃれな格好。もちろん20万円のコートも着ていくつもりだ。もしかしたらその流れで、最初に勘違いしたようなモデル的なのになれたりするかもなんてバカみたいなことも考えた。こうなってしまったら、バカきも妄想男の俺は止まらない。カットレッスンなので始まる時間は閉店後だったから、もしかしたら終電が間に合わなくなる可能性も考えられて、そのときにその美容師さんのところに泊めてもらえたりしたらどうしようなんて考えたりもした。もちろんへたれなぼくは妄想の中でも、家に泊めてもらってすぐに襲うなんてことはしない。ぼくは玄関から1歩も出ず、そこで寝るなんて言って、紳士気取ったりして…。考えることは優しくしてもらえて、お礼にキスをしてもらえる程度。それから、お互い(相手も)気になっていって、付き合うことになれば良いなというありえなすぎる希望だ。

そんなことを考えているうちに2月1日、ついにカットレッスンの日が来てしまった。おしゃれは頑張ったつもり。場所は3回も下見に行ったのでばっちり。てかその美容院と、声を掛けてもらったところはその人に会えないかなと思って恒例儀式のように一人で買い物に行くときは通っていた。本当に楽しみにしていた日が来た。その日はアウトレットのセールに朝から行って、学校に行って、その後渋谷に出たので、時間があったので、ついでに買い物をした。靴を買ってしまった。そして、行く前にマックでひもじく夕食をとって、どきどきしながら時間が来るのを待つ。そして、ついに待ちに待ったカットレッスンである。憧れを抱く青山の美容室に入るだけでもとってもうれしい。しかもただで、女の人に切ってもらえるのだ。

店内に入った。2ヶ月ぶりの再会。妄想を膨らましすぎて想像の中でかわいくしすぎてしまったせいもあり、あれ、こんな感じの人だってっけって思った。でもフレンドリーな笑顔がとてもかわいかった。髪型はもちろんお任せ。洋服には興味あるけど、髪型にはいまいち興味が持てないので、いつも美容院に行くときは好きに切ってくださいと言っている。そこはやはりアシスタント。少し戸惑ったみたいだ。どんな感じがよいか雑誌を見ながら聞かれた。でも、本当にどういうのが良いとかよくわからないし、なんかそういうのが言えないのがぼくのダメなところ。こっちも戸惑ってしまった。切る髪形がなんとか決まり、スタイリストの先輩の方と切る方向性についてしゃべっていた。美容院の裏側がおもしろい。それで、まずは切る前の写真。写真を見るとき、その美容師の彼女はぼくを正面から見上げた。そのときの彼女の目。声をかけられたときにもあったその目。印象に残っていたらしい。一瞬どきっとしてしまった。続いて、シャンプー。美容院に行くときはだいたいアシスタントの女の人がシャンプーしてくれることが多いけど、そんなどの女の人よりも緊張した。そして、初めてのカットモデル、初めての女性によるカットが始まった。カット中、どんなことを話そうかいろいろ考えてきていた。彼女がホームページのコラムに書いていた直島のこととか、声をかけてもらったときのこととか。でも、結局緊張しちゃってあまり話せなかった。せっかく話しかけてくれた質問もいまいち広がらせることもできずに、本当に情けない限りである。最後の方は沈黙も多かった。いつもは彼女はどのくらいお客さんと話しているのだろうと気になった。そんな情けないぼくは、緊張のためか、店内が暑く、汗をかいてしまっていた。ぼくのおでこは油がたまっている。ぼくの前髪を切るときにどうしても触れてしまうそのおでこの油が本当に申し訳なかった。そして、とても恥ずかしかった。ときには彼女はぼくをほめてくれたりした。おしゃれさんだねぇとか、かっこいいねぇとか。スタイリストの先輩は、ぼくを切っている彼女がずっと顔を赤くして切っていることを指摘したりして、なんか若干うれしかった。もちろん鵜呑みにしているわけではないが、うれしかった。そしてやはり恥ずかしかった。買った靴のことも見たかったなぁとか言ってくれた。カットも終盤になり、その美容院の代表の偉い人が彼女のカットを修正。ぼくは彼女のカットがうれしかったので、逆に彼女のやってくれたのを修正してほしくなかったが、代表の人はなんかとても上手にいろいろ指摘していた。美容師は奥が深いと思い知った。ようやくカットは終わり、また最後に写真。彼女はまたあの目をする。そして、終わり。彼女は脱いでいたコートとか、買った靴とか、髪型に似合うよとかいろいろ言ってくれて、しかもあの目をして言ってくれて、本当にとってもとってもうれしい気分で帰ることができた。彼女はもちろんいろんな人にそういう言葉をかけているはずだし、男の人の髪だっていろいろ切っていると思うし、もちろんそんなほめ言葉社交辞令であることはわかっている。でも、かわいい女の人にかっこいいと言われたらそりゃうれしいに決まっている。結局終電に間に合わないことはなかったが、彼女の魅力に、彼女のあの正面から見たときにする目に、どっぷりはまった時間となった。

そんな気持ち悪いぼくは、家に帰って、またもや気持ち悪い行動。彼女の名前をgoogleで検索してみた。そしたら驚いたことに、彼女は雑誌によく載っているスナップ常連の子だった。ぼくがよく読んでいるファッション誌にも載ったことがあるらしい。さらには、そこの美容院のレセプションの子はとても有名な読者モデルであることもわかった。普通に彼女の写真が出てきた。街で見つけた素敵なあの子。びっくりだ。また、2chでは叩かれてもいた。どうして雑誌出てるのとか、結構きついことも書かれていた。普通に2ch、うざいです。

あと、とにかくお礼がしたくて、気持ち悪いかなって懸念したけど、またもや小さな情けない勇気で、今日はありがとうございましたってメールした。うれしかったですってメールした。どんなにうれしかったか彼女にはわからないだろうが、本当にお礼がしたかった。彼女は、メール返してくれた。こちらこそありがとうって。かっこよくなったよって。

次の日、朝起きると、久しぶりの感情が芽生えていることに気がついた。恋である。胸がきゅーんと締め付けられる。なんか涙もろくなる。叫びたくなる。なんかいてもたってもいられなくなる。なんと懐かしい感情だろうか。この胸のなんともいえない締め付け。恋をすると、胸が痛い。それは本当である。今日はパソコンを開くたびに彼女の写真見た。少しぼーっとしているときは気づいたら彼女のこと考えてた。昨日のこと考えてた。

ぼくは完全にバカである。仕方ない。ばかだ。でも、本当に恋をしてしまった。普通に彼女とお付き合いしたい。手をつないで歩いたりしたい。こんな思いはいつまで続くのだろうか。どうせまたいつもみたいにあまり会うことがないだけにすぐに消えていってしまうような軽い気持ちなのだろうか。でも、今回のこの胸の締め付けようはいつもとは確かに違う。ぼくの髪型を見るたびに、髪を触るたびに彼女のこと思い出してしまう。本当にばかなんだろうけど、やっぱり好きになってしまったのだ。

彼女の連絡先は知ってるし、普通に今メール送ることだって可能である。電話だって物理的には可能だ。でも、ぼくにはやっぱり無理だ。それで彼女に嫌われるのは嫌だ。そんなの怖がったら何も始まらない。確かにそうである。でも、やっぱ無理。とにかく、ぼくはまずは彼女の乗ってる雑誌を探すことから始めてみる。そして、美容院が休みの日にはきっと彼女はどこかにいるので、彼女に会いに行く。いや、彼女を探し、遠くから見に行く。たまには勇気出して偶然をよそおって声かけてみたりする。これじゃただのきもい人だ。ぼくはとりあえず彼女のいるところまで行ってやる。彼女がいる雑誌の世界。おしゃれな世界。まずはこの髪型で、彼女が切った髪形で雑誌に載ってやる。できる限りの時間渋谷原宿を歩き回って、髪型を雑誌に載せるんだ。そしたら、彼女にメールもしちゃう。あなたが切ってくれた髪で、雑誌に載っちゃいました。本当にありがとうございましたって、言いたい。そして、いつしかスナップの常連になってやるんだ。彼女みたいに、雑誌のスナップに載ってやるんだ。学生だし、これからどんどん忙しくなっていくと思うけど、がんばってやる。もちろん彼女のいる世界はそんな甘いもんじゃない。わかってる。ぼくが入っていけるような世界じゃない。でも、そうするしかない。彼女に近づくためにはそれがいい。そして、もちろん髪は彼女に切ってもらうんだ。またカットモデルしてくださいってメール送ってやる。彼女がスタイリストになったら、いっぱいお祝いしたい。そうして、ぼくの存在を彼女に知ってもらえたら本当に幸せなことである。そして、彼女のいる世界に近づくことができたら、彼女に知ってもらえたら、それでついに告白してやるんだ。ずっと、ずっと好きでしたって言うんだ。こんなぼくだけど、あなたが大好きです。

もちろんこんな希望的なプランはできるはずがないのかもしれない。でも、ぼくは彼女に少しでも近づきたい。久しぶりにこんな感情になったんだ。彼女がならせてくれたんだ。ぼくは真剣に考えているのだ。彼女はもちろんぼくがこんなに彼女に対して強い感情を抱いたことを知るはずもない。でも、仕方ないんだ。胸がきゅーんとするんだ。

彼女のこと考えると、なぜかしらないけど泣きそうになってしまう。遠すぎる彼女を、心は感じているのだろう。

ぼくは彼女が好きである。もうそれはゆるぎない。

だからいつかそんな夢、実現させてやるんだ。

ぼくに恋を久しぶりに教えてくれて、ありがとう。

こんなぼくで、ごめんなさい。

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